カスタマーコミュニケーション管理のベストプラクティス
カスタマーエクスペリエンス(CX)戦略に関しては、カスタマーコミュニケーションはカスタマージャーニーの最も重要な要素の1つです。CX 戦略では一般に最前線でのコミュニケーションに焦点を当て、顧客との効果的な話し方とやり取りの方法について、定期的に従業員をトレーニングし、指導します。カスタマーコミュニケーションもこれと同様に重要です。ジャーニーの過程で配信されるあらゆる場所で、合理化され、一貫性があり、明確で、関連性のあるものでなければなりません。
カスタマーコミュニケーション管理(CCM)とは、顧客とのコミュニケーションを介して顧客との関係を構築し、維持するための活動です。
包括的な CCM 戦略は、以下のような点で企業にメリットをもたらします。
- 一元化された CCM プラットフォームを通して、リアルタイムでクロスチャネルのインタラクティブなコミュニケーションが可能となり、パーソナライゼーションとチャネル選好、双方向性、一貫性と利便性を通じてカスタマーエクスペリエンスが劇的に向上する。
- すべてのチャネルの通信を作成・配信する集中型アプローチでビジネスユーザーがコンテンツを管理できるようになり、運用面やデジタル面でのサイロ化が排除され、効率が向上する。
- コアシステムとの統合で既存のテンプレートとデータを活用し、パーソナライズされた関連性の高いコミュニケーションを作成することで、デジタル変革を加速する。
- コンプライアンスをカスタマーコミュニケーションの設計に組み込み、リスクを軽減する。
適切な CCM では、企業とその顧客の間での情報伝達を円滑にするため、人、プロセスとテクノロジーの組み合わせが必要となります。
以下では、専門家が推奨するカスタマーコミュニケーションの10のベストプラクティスを示します。
- オムニチャネルを採用する
オムニチャネルコミュニケーション戦略により、企業は、すべてのチャネルにわたって一貫性のある一元管理されたコミュニケーションを発信できます。こうすることで、企業とのやり取りに顧客がどのチャネルを選択した場合でも、普遍的なカスタマーエクスペリエンスを届けることができるようになります。一貫性のあるメッセージングからは信頼が生まれ、そうした信頼からはリピート顧客が生まれます。
顧客との対話を通じて顧客が活用しているチャネルを見つけ、そうしたチャネルすべてに対応できているかどうかを確認しましょう。
- 明確で読みやすく、説得力のあるコンテンツを作成する
コンテンツは必ず簡潔かつ明瞭で、顧客が理解しやすいものにします。
理解しやすいコンテンツの特徴
- 厳選された言葉とシンプルな言い回しで書かれている
- 業界の専門用語は使わない
- 読む人の身分や立場、状態や関連性を考慮する形で伝えられる
- 短くて簡潔
- コミュニケーションの中で共感と人間味を見せる
コロナ禍により、新たな人間中心の時代が訪れました。ロックダウンで家族や友人に会えずに過ごした数か月の間に、人とのつながりに対する価値は高まりました。今日の顧客は、人間的な要素がカスタマーエクスペリエンスのあらゆる段階に組み込まれることを期待しています。
今では、機械的なマスマーケティングや一括送信的なコミュニケーションは煩わしいものと見なされています。消費者は、個人として理解され、認識されることを望んでおり、自分の愛顧に感謝してくれる組織と取引をしたいと考えています。
- 顧客とのこれまでのすべてのコミュニケーションを考慮する
CCM ですべてのチャネル経由で顧客に送信されたあらゆるコミュニケーションを追跡できるようにしましょう。顧客は、企業がこれまでに自分と行ったやり取りを覚えてていてくれることを期待しており、これは重要です。なぜなら、例えば、顧客に製品やサービスの推奨を依頼するメールを送信する場合、最近苦情が寄せられた顧客にはそのようなメールの送信を避けるべきでしょう。
- 顧客とのコミュニケーションを状況に合わせてパーソナライズする
銀行や保険会社などの組織には、高度にコンテキスト化された方法でのエンゲージメントに活用できる顧客データが大量にあります。
あらゆるカスタマーコミュニケーションは、顧客の注文履歴と以前のやり取りを考慮してパーソナライズする必要があります。
ここで注意しておきたいのは、パーソナライゼーションに不安を覚える顧客がいる可能性があることです。例としては、企業が自社ウェブサイトで顧客のオンラインアクティビティを追跡する場合などが挙げられます。カスタマーエクスペリエンス管理会社のInmomentが2018年に実施した調査(2018 CX Trends Report)では、回答者の75%があらゆる形態のパーソナライゼーションが多少なりとも「不気味」に思えると述べています。
- チャネル選好を収集し、尊重する
自社から受け取りたいコミュニケーションの種類やチャネルを顧客に尋ね、あらゆるコミュニケーションでそうした好みを尊重します。
- 顧客に威圧的な態度を取ったり、コミュニケーションを大量送信しない
スパムメールが好きな人はいません。顧客に送信するすべてのコミュニケーションは、必要性と関連性があるものにしてください。
1日、または1週間のうちに顧客と接するタッチポイントがどれだけあるか考えてみましょう。メッセージの受信を拒否されてしまうことのないよう、さまざまなチャネル経由のコミュニケーションで顧客を圧倒するのは避けるべきです。
- セキュアで規制を遵守したデジタルコミュニケーションに仕上げる
これは、規制により一定水準のセキュリティが規定されている金融サービス、ヘルスケア、保険などの業界で特に重要です。
これらの業界には、遵守すべきさまざまな規制があります。コンプライアンス担当が規制言語を迅速かつ容易に管理、追跡、監査、承認できる一元化されたCCMアプリケーションで、コンプライアンスリスクを軽減する必要があります。
- コミュニケーションの発信に関連するカスタマージャーニーをマッピングする
企業がカスタマージャーニーマッピングを行う際、自社から発信するカスタマーコミュニケーションは見過ごされがちです。顧客とのコミュニケーションは、ジャーニーの過程で配信されるあらゆる場所で、合理化され、一貫性があり、明確で、関連性のあるものでなければなりません。
企業から顧客に伝える内容は相手方にとって重要な情報であることが多いため、ジャーニーマップに必ず取り込むようにしましょう。例えば、「請求書の内容が理解できなかった」などの誤解があると、体験に悪影響が及びます。結果的に、カスタマーサービスへの問い合わせ電話件数の増加と顧客満足度の低下という形でビジネスに悪影響を与え、顧客離れが増える可能性もあります。
カスタマージャーニーマッピングは、コミュニケーションを提供する最適なタイミングと場所を認識し、顧客のニーズを満たしつつ、ブランドのあり方に沿ったコミュニケーションの継続的な提供に役立ちます。
- チャネルごとにメッセージを調整する
顧客の使用するチャネルや使用方法は千差万別なため、メッセージはチャネルごとに調整する必要があります。ツイートは短く簡潔にし、メールは多少長くなっても、詳しい内容にします。SMSでは、よりカジュアルに伝えることができます。
ご紹介したとおり、カスタマーコミュニケーション最適化の際に考慮すべき要素はたくさんあります。こうしたベストプラクティスを念頭に置き、時間をかけてカスタマーコミュニケーションを繰り返し改善していくことで、顧客の信頼とロイヤルティを育成することができます。